インタビュー

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ちゃんとしなくてはいけない自分を手放せた。
自然に囲まれた環境で取り戻した自分らしさ。

白石市地域おこし協力隊 井口裕太さん

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他人の視線を気にしてしまい、理想の自分を演じてしまう。
誰にでもある経験ではないでしょうか。しかし、その考えに自分自身が縛られ、いつの間にか「自分はどうしたいのか?」分からなくなるケースもあるのかもしれません。
「こう見られたい」自分への固執を手放すためには何が必要なのか。
自分らしく暮らすためには、どうすればいいのか。

宮城県白石市の地域おこし協力隊として活動する井口裕太さんに、自然の影響で変化した井口さん自身の内面についてお話を伺いました。

白石への気軽な入り口「shiroishi base tokyo」

井口さんが地域おこし協力隊として白石でやっている活動は何ですか?

東京にあるコミュニティスペース「shiroishi base tokyo」略してシロベイの運営が中心的な活動です。シロベイでは、協力隊の活動目的である関係人口を増やすための足がかりとして、白石の魅力に触れてもらうためのコミュニティスペースを運営しています。
普段は、コワーキングスペースやイベントスペースとして営業しています。
SNSの投稿やイベント時の調理補助などを主に担当しています。

shiroishi base tokyoでは、どのようなイベントをしていますか?

1日限定で様々な方に店長としてお越しいただき、異なる価値観を持つ方同士が越境出来る場を提供しています。イベントでは白石の名産品を調理して、食事やお酒も提供してお互いのことについて語り合える機会にもなっています。

参加者の皆さんが作って下さる雰囲気が温かく、楽しんでもらえているかと思います。
安心出来る環境だと、自己開示もしやすく越境が起きやすくなっているんじゃないでしょうか。

shiroishi base tokyoをこれからどんな場所にしていきたいですか?

白石への気軽な入り口になって欲しいと思います。
観光情報や名産品を紹介するコーナーもありますし、白石の魅力を体験してもらえる場として活動出来ると嬉しいですね。

豊かな自然に囲まれ、人間本来の暮らしに戻った

shiroishi base tokyoをこれからどんな場所にしていきたいですか?

僕が山に囲まれた長野県の出身で、山の神々しさを幼いころから感じられる環境で育ちました。白石に初めて来たときに見た山の雄大さが身体に響いて、こんな場所で生活したいなあ、と思えたんです。手の入った自然ではなく、ありのままの自然みたいに感じられました。

移住して井口さんご自身に変化はありますか?

大した変化じゃないかもしれませんが、聞く音楽が変わりました。
東京にいた頃は、ヒップホップばかり聞いていましたが、今では歌詞がないインストを聞いています。刺激よりも心地よさを求めるようになったのかもしれません。

人への向き合い方も多少変わりました。
以前は大学から続くコミュニティの人としか話しませんでしたが、今ではよく出かけるようになりました。友達とゲームをして過ごしていた休日が、こちらに来てからは近くの海に行ってみたり、ドライブをしています。知り合いから聞いた美味しい ごはん屋さんに行って外へ向け行動するようになっています。

白石の何が井口さんの生活を変えたんだと思いますか?

白石で暮らしていて、外に出ると単純に気持ちいいんですよね。近くに河川敷があって、土が踏めます。東京だと道路が舗装されてるから、自然に触れるまで若干距離があります。
自然に日常で触れる生活が積み重なって、少しずつ自分を変えてくれた気がします。

自然に触れ続けると何が変わって来るんでしょうか?

人間本来の生活に戻った感覚がしっくり来たのかもしれません。例えば、暗くなってきたから外に出るのをやめたり、自然な朝日で目を覚ましたりしています。一つ一つは小さいのですが、積み重ねで変化していったような気がします。

「きちんとしなくてはいけない自分」を手放せた

暮らし以外での変化はありますか?

物事からあまり逃げなくなったと思います。白石で関わる人達が自分と向き合ってくれるので、そこにきちんと答えたい気持ちがあるからかもしれません。地域おこし協力隊のメンバーと河川敷を散歩しながら、対話する機会もあって自然の中だと自分の気持ちをさらけ出しやすいんですよね。

自然に囲まれた環境だと対話の質も変わりますか?

僕の中では焚き火の感覚に近いです。今はどうしてもオンラインのコミュニケーションが多いですよね。画面越しではなく、同じ方向を向いて一緒に話すと無言の時間も気にならないので、じっくり深い部分を話せます。夕焼けを見ながら活動の振り返りを話したり、感情の共有もしています。

 

 

自然に囲まれるとどんな気持ちになりますか?

自分の小ささを目の前に差し出されている感じがします。大きな山を目の前にすると、自分が抱えている悩みが小さいものに思えますし。雄大な自然を眺める事で心も身体もリフレッシュされている感覚があります。人工物に囲まれた状況の内省や対話は僕にとって難易度が高くて、着地しにくい印象があります。自然に囲まれると、ある種着地点を自然に頼れるんです。生きているだけでいいと思えて、自分を肯定出来る感覚が自然にいた方が得やすいです。

自分に素直になりやすいイメージでしょうか?

そうですね。本来の生き物として自覚を取り戻せるのかもしれません。今では自分らしさをストレートに出せますが、それまではどこか「きちんとしなくてはいけない」と思い込んでいました。
「しっかりした人」として見られたいのが昔からあって、その考えがどこか沁みついていたんです。正直、どこか生き苦しさもありました。白石に来てから、そのままでいいんだなぁというような感覚が得られるようになった部分はあります。

「きちんとしなくてはいけない」自分を手放してみてどうですか?

楽に生きられるようになりました。表情も柔らかくなって、生きやすくなった実感があります。

井口さんが白石の経験で得たものは何でしょうか?

自分自身の素を出すことに不安や恐れがなくなったことでしょうか。今までの僕はコミュニケーションで、相手にとっての正解を探してしまったり、この場では何がベストかすごく考えていたんです。白石で関わる方々が自然体なので、僕自身もありのままでいられます。
見栄だったり、他人からの目線を意識せず自分らしくあることが本来の人間としての生き方なのかもしれません。白石での生活がそのことを気づかせてくれました。

白石市地域おこし協力隊 井口裕太<span>さん</span>
Profile

白石市地域おこし協力隊 井口裕太さん

長野県諏訪の出身で、山と神社に囲まれて育つ。
東京の会社に入社後、白石市の自然に魅入られ移住を決める。地域おこし協力隊として地域との関わり、またその魅力を発信するためにSNSコミュニティの運営と定期投稿を行っている。
現在は東京に開設された白石のイベントスペース「shiroishi base tokyo」と行き来しながら関係人口の増加をはかるべく活動中。